小金井市山崎内科院長の山崎です。今日もお付き合いください。長引く 咳そう の鑑別についてです。今回でシリーズ最終回とします。
長引く咳に対し問診で気管支喘息を疑う症状がないか、副鼻腔気管支症候群を疑う症状がないか、胃食道逆流を疑う症状ががないか、咳が出る薬はないか、心不全を疑う症状がないかなどをチェックします。そのうえで胸部レントゲンで異常がないことを確かめます。ここまでの作業がきちんとされていないことが多いことに気がつき学会でもここをきちんとすることを提案しました。ここまでの作業で多くの疾患を除外することができます。遷延性咳そう(3週以上持続)、慢性咳そう(8週以上持続)はここまでの作業がきちんとされて初めて定義できるのです。ここまで除外できると多くが咳喘息かアトピー咳そうで、吸入ステロイドと気管支拡張剤の投与で改善できると考えました。これらが有効な場合、気管支拡張剤が有効なものを咳喘息、無効なものをアトピー咳そうと考え、無効な場合は咳が止まれば治療を中止。有効な場合はさらに呼吸機能やピークフロー値をチェックし問診でチェックできなかった気管支喘息を再度を見つけ出し、(これは咳しか症状がないので定義上は咳喘息だが気管支の収縮からみると息苦しさを伴う典型的気管支喘息となんら変わらない)中等度の気管支喘息として治療を続け、気道の狭窄のないものは1-2か月の吸入ステロイド治療で終了としました。
ここでアトピー咳そうとした患者さんのなかにアトピー咳そうでない疾患群が入っていることに気がつきます。いわゆる感染後咳そうという病態です。厳密には気管気管支に好酸球性の炎症があるかどうかで区別するのですが、そのような検査はほとんどできません。ただ感染後咳そうは一時的に咳が出やすくなった状態なので8週以内にほとんどの場合消失します。そのため大学病院を受診した患者さんなどは受診の時点で感染後咳そうはほとんどなくなっているが開業医を受診するときは感染後咳そうとアトピー咳そうは区別できないことになります。アトピー素因の有無も長引く咳の8割以上がなんらかのアレルギーがあったりアレルギー疾患の家族がいたりするので区別する要素とはなりません。ただ今後の経過は同じなので臨床家にとってはあえて区別する必要はないと考えました。そこで気管支拡張剤の効果で喘息、非喘息と区別して考えることとしました。その後アトピー咳そうよりも感染後咳そうの方が多いことに気づき、これを感染後だけ咳が出やすくなるのではなく、もともと咳が出やすい人が気道感染をおこしたことにより咳がさらに出やすくなり咳を訴えてくるのだと考えるようになりました。
喘息、非喘息と区別する考えから息切れ、胸苦しさ、咳に対し、気管支拡張剤が有効であれば気管支喘息である。喘鳴などは関係ないという考えにつながっていきます。また気管支喘息の人でも非喘息の息切れ、胸苦しさ、咳が生じるので気管支拡張剤の有効性で喘息の症状かどうか判断する様になりました。私がまず気管支拡張剤を吸入してみましょうという所以です。私の診療の根幹となっています。
一度このシリーズは終わりにします。