一昨日は名古屋で日本内科学会、昨日は日本医学会に参加してきました。その中で IPS細胞 の臨床応用に関する 山中伸弥先生の講演を紹介します。
IPS細胞は人のどの細胞にもなることが出来る細胞で、これから網膜や神経の細胞を作り出し、移植することにより多くの病気の治療に利用できる画期的な細胞です。2014年には高橋正代博士のグループにより加齢黄斑変性に対する移植が成功し、患者は失明を回避することが出来ました。これは自分の血液よりIPS細胞を作り出し、網膜色素上皮細胞に分化させそれを移植したものです。ただしこれには厳重な安全性の検討などの必要性から半年の歳月を必要とし約1億円の費用がかかり、臨床応用するにはまだ問題があります。そこで山中先生らはあらかじめIPS細胞を他人から作っておき、ストックしておいてこれを用いることを考えました。しかし他人からの移植のため免疫が一致しないと拒絶反応が起きます。そのため日赤の協力のもと、拒絶反応を起こさない人を選び出し、日本人の約40%に使用可能なIPS細胞を作り出し2015年より、医療機関や企業への配布を開始しています。それにより2017年には加齢黄斑変性症に対する移植がが開始されました。2018年にはパーキンソン氏病に対する神経細胞の移植が医師主導治験として開始されています。このようにIPS細胞を用いて多くの病気が克服される日が近いと感じました。しかし現段階ではまだ実際の治療がされているのは一桁しかありません。ただこのIPS細胞まがいの?細胞を用いて治療をしているという医療機関が散見されるので注意が必要です。